A small candy, honey taste

 

 

午後練が終わって、今は部室。うちってテニスの名門校なのに部室しょぼいよね?

「越前〜!今日マック寄ってこーぜ!」

「あー俺今日はいいッス」

「えぇえぇぇ!?」

「…何スかそれ」

桃とおちびのいつもの会話。だけどおちびが桃の誘いを断るってのはいつもじゃない。

お前どっか具合悪いのか〜!?って大げさに騒ぐ桃をクールにあしらって、おちびがこっちを見る。

ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ上がった口角に俺は気付いて、俺はちょっとどころじゃなくにへ〜〜っと笑っちゃった。

それに気付いたのは

「どうした英二?すごい楽しそうだな」

って大石のセリフ。

「べっ、別にっ!今日の午後練雨降んなくてよかったなって思っただけ!」

朝は登校中に降られて大変だったよなーってごまかしながら、急いで制服に着替える。バレちゃいけない…っていうか隠すことが楽しい・みたいな感覚でもあるんだよね。ちろっとおちびを見てみたら、まだ桃達に絡まれてた。

部室を出たところにいかめしい顔した手塚がいて、竜崎先生に呼ばれてる大石とはここでバイバイ。校舎に戻ってく2人を見送って、俺はぼーっと部室内の喧騒を聞いてる。

ガチャッと音がして一瞬声が大きくなって、

バタンッとまた小さくなった。

「まったく俺はおもちゃじゃないんだから…、菊丸先輩・お待たせッス」

「おちび!よっしゃ帰ろーぜっ☆」

もみくちゃにされて乱れたおちびの頭をぐしゃぐしゃっとなでると、

「もー−!先輩まで何すんですかっ!」

怒られちゃったけどそれもまた楽しくて、俺はおちびを頭ごと抱え込んだ。

 

放課後デートはゲーセンか、カラオケか、スポーツショップかマックかテニスコート。皆と行くトコと同じだけど、2人で行くとちょっと特別になる。

ささやかな・・・そんなモン。

「今日はドコ行く?おちび!」

ささやかだけどうきうきした声でちっさい恋人を見おろすと、

「どこでもいいッス。……じゃあマック」

ってこいつほんと付き合ってる気あんのか〜!?って返事。ま、こいつらしくて良いって言えばそうなんだけどね。

「お前、さっき桃に行かないっつってたじゃん!いーのかよー?」

鉢合わせても俺はいーけどね〜?って付け足す。そしたらさすがにちょっとまずいと思ったのか、ちろっとこっちを見て

「………じゃー打ちに行きましょーよ」

「いーぜっ!いつものストテニ場だよな♪」

「や、うちで」

「えっ?」

おちびの家(うち)。寺ですげー広くて、手作りのテニスコートがあるって事は知ってる。けど、遊びに行った事はないんだ。

「おちびん…ち?」

「そうッス。土のコートだけどいいでしょ?」

「あ、うん。いいけど…」

おちびはニッと笑って、一歩前を道案内するように歩き出す。

俺よりかなり小さいその背中を見ながら、俺はちょっとドキドキしてる事に気付いた。

 

部活が終わってから、暗くなるまでまたテニス。俺達ってほんとコレしかないんだなぁって思うけど、やっぱ楽しい。おちびは全然容赦ないけど、先輩に対して生意気だ!じゃなくて普通に自然に俺ももっと強くなろう!って思うんだよね。

え?なに、惚れた弱み??うっさい!

おちびのお父さんが何度か鐘を撞きに来て、やらせてもらっちゃったりして。ラブいことは何もなくても、ちょっとした非日常がすごく楽しい。非日常がおちびと一緒だってのが、楽しいんじゃん?

ちゃっかり夕飯頂いて。またお邪魔します!っておちびの家を出る。親印象完璧パーペキパーフェクトじゃない?俺!なんてね。そんな事考えてたらよほどにっこにこしてたのか、おちびに

「…菊丸先輩キモイ。何笑ってんスかずっと」

下からなのに思いっきり見下した目でにらまれて、

「キモイはねーだろー!楽しーなーって思ってただけだよっ」

タックルの勢いでおちびの頭を抱え込む。

「わっ!ちょ…っ先輩!いたた…」

「また行きたいおちびんち!あのタヌキ触りてーな〜」

「カルピンは猫だから」

「でもおちびの髪も触り心地いーぞ♪」

「どうもッス…」

おちびを抱えたまま、ふらふらしながら歩くバス停までの道。

他愛ない会話。

「俺も楽しかったッス」

「ん?」

「今度は泊まってってよ先輩」

「えっいーの!?行く行く!約束だぞ〜」

「じゃあ先輩、また明日ね」

見るともうバス停の明かりが見えていて、あと数時間でまた会える距離が何だかとても遠くに感じる。

「ぅん、明日な。気を付けて帰れよっ おちび!」

絡めてた腕をほどいてぐりぐりと頭をなでる。

「もーーまた!そっちこそ寝こけて乗り過ごしたりしないでよ」

「そ、それはお前だろーっ」

「菊丸先輩」

「おっ…?」

「じゃー朝練で」

触れるだけのキスで、思い出した。

俺達って一応、付き合ってるんだった。

「ヤバ…いんじゃねーの俺…」

すっごいノリノリで泊まりに行くとか言っちゃって。

帰ってくおちびの後ろ姿をみつめたまま、

ちょっとどーしよう?

…って言うか

「送りにきた方が先に帰るなよなぁ…」

あしたの朝練、どんな顔して会うんだよ・とか考えてたら、ホントに乗り過ごしそうになっちった。

 

 

END

 

 

久しぶりに書いたリョ菊ですー*長い馴れ初めがあるんですけど、それはまたいずれ近いうちに☆リョ菊は可愛くて良いです(^U^)ちまっちぃのとぴょんぴょんはしゃぐ子で。

テニプリはBLEACHと違ってライトな心持で色々な状況で書けるのでいいです☆

タイトルの「small」は「ささやかな」、「candy」は「甘いもの」、「honey」は「いとしい人」の意で*