魂 を 入れ 変え る (携帯用)


今日は朝から雲ひとつない晴天で、こんな日の体育は最高だよなと啓吾達と騒いで、気分良く下校した。
啓吾達と別れてから石田が前を歩いてるのに気付いて声を掛けたら、
君って本当能天気だねと冷たい目で睨まれた。
何の言いがかりだよとムッとして返したら、
あの虚の霊圧に気付かないなんて本当僕には見当もつかないよ・と言われて、
そう言えば体育の時地震あったけどあれか?ときょろきょろ焦ってたら石田はもう随分先を行っていて、慌てて追いかけた。
「何だよ、別にいーじゃねーか。倒されたんだろ?…あのトキ5時間目だったから代行証教室に置いてたんだよ」
だから分からなかったんだと言う意味を含めて並んでじとりと隣を見ると、石田は1ミリも視線をずらさずに
「そうかぃ。ま、確かに君がこの辺りの担当な訳じゃないんだし、どうでも良いと思うよ」
「だろ?ココにはルキアの代わりが居るんだろー」
俺が仕事横取りしてやる事ないよな・と笑ったら、(石田があまりに無反応なので苦笑というか失笑になってしまったけど;;)更に無表情で
「でも、早く帰ってあげたほうがいいんじゃないかな」
「え?」
俺が早く帰っても遊子も夏梨もその時間学校だったし、親父の心配なんかするわけが無い。コンは元より逃げ足に関しちゃ、巷に出て来るレベルの低い虚なんか追える者はいない。何言ってんだこいつは・と眉間の皺を深くしていたら
「じゃ、僕こっちだから」
「あ!おいっ……ぉう、じゃ・な」
隣を見れば石田はすでに道を曲がって背中を向けていて、結局訳が分からないまま、俺は残りの家路を歩く。
石田の謎掛けはその間に キレイさっぱり忘れてしまった。


玄関のドアを開けて、階段を上がって、部屋のドアノブに手を掛けようとしたところで、ようやく今日がいつもと違う事に気付いた。
コンの気配が遊子と夏梨の部屋に移ってて何やらもがいている音が聞こえるだとかそんなんじゃない。

この霊圧・は、、

「恋次!?」
慌ててドアを開けると、目の前に居たのは感じたとおりの死神。
ただ、その姿は
「よぉ、一護。ちょっと休ませて貰ってるぜ」
至る所切り裂かれた死覇装と、傷だらけの体。何事も無いように上げた手にも、血が乾いてこびりついている。
「恋次っ、おま……どうしたんだよソレ…」
後ろ手にドアを閉めて一応鍵も掛けて、足早に近付くと。見た目の怪我の割には大分落ち着いた呼吸をしていて、少しほっとする。
「今日、ココの隣の地区にデカイのが出てよ。応援に行ったらこのザマだ。デカイっつかもう数が多くて 相当梃子摺っちまったぜ」
はーーーっと深い溜息をついて、俺のベッドにもたれかかる恋次。
「…な・んだよ、アレそんなに大変な奴だったのか……」
そんなに強い地震じゃないと思ったけど、グラウンドにいて動き回ってたからかも知れない。どっちにしろ虚どころか死神の霊圧も察知できない自分を、ほんと使えねーと思う。
「何だ、てめー気付いてなかったのか?代行証はどーしたよ」
呆れた声で言われて、暗に代行証が無きゃわかんねーんだろと笑ってるのが手に取るように分かって、ギクリとする。
「んないつも持ってられる訳じゃねーんだよっ。それよりてめーだ!そんな大怪我しててなんでウチに居るんだよ、何ですぐ帰って診て貰わねーんだ!?」
井上の所ならまだしも、ウチは医者っつったって人間専門。浦原商店だってあるのに。。
「…すぐ帰るのもタルかったんだよ。別にこれぐらいちょっと休んでから帰りゃいーやって思って、外に居るよりいーかってココ来ただけだ」
そう、何故かむすっとした顔で、恋次は目を逸らす。
石田が早く帰ったほうがいいと言ってたのは、この事だったのかとようやく合点が行った。
「そ・か。でもオマエ、義骸に入ってないと虚に狙われ易いのは変わらねーんじゃねェの?」
「そりゃそーだけど。無ェもんはしょーがねーだろが」
「……コンに入っとく?」
じとりと睨んできた恋次に本気冗談で本気声で言ってみたら、怪我人だなんて大嘘の威力で拳が飛んできた。
「あっぶねーなー冗談だろっ。暴れんじゃねーよ まだ血ィ余ってんのかテメー」
血の匂いのする拳を受け止めて、ふとひらめく。
「うるせーよ。あー今ので休んだ分全部パァだ どーしてくれんだテメー」
さっきから睨んでばかりの恋次の、受け止めた腕を掴む手を、ぐっと引いて顔を近づける。
「痛てっ、何しやがんだテメ、一護っ!」
「なぁ、じゃ・俺に入っとかね?」
「………は?」
「別に今ちょっと休むだけなんだから・多少合わなくたっていーじゃん、虚に狙われるよりマシだろ!」
俺は代行証で、さっさと自分の体から抜け出る。抜け殻になった俺の体を恋次に押し付けて
「早く入っとけ!そんでちょっと寝てろよ。座ったまんまじゃ十分休めねーだろ」
ベッドを指差したら、恋次は俺の抜け殻を支えたまま歯切れ悪く口を開いた。
「でも、魂魄のケガは肉体に影響すんだぜ、お前・俺が何でココで休んでんのか分かって・っ」
うろたえる恋次の口を・塞ぐ。

「予定外に現世・来れたからだろ。お前が俺んトコ・来んのなんて」

押し付けた唇を離して、ニヤリと笑ってやる。
目を丸くして赤くなる恋次に、再度抜け殻の身体を押し付けて。


慣れない肉体は窮屈だとぶつぶつ言ってた恋次は、ベッドに押し込んだら結構あっさり眠りやがった。
コンで見慣れてるはずの“客観的に見る自分の身体”だったけど、眠る自分の中身が恋次なんだと思うと何か不思議な、可笑しい気がして
俺は口元だけで笑ってみる。
恋次は ちょっと休むだけ・と散々言っていたけれど、どれだけこっちに居られるのか、いつまでに戻らなければ咎めがあるのか・って気がかりが残っていたのはもう随分前の事。
現世に来る時必ず持ってるハズの恋次の伝令神機に何も連絡が入らないんだから、別に良いんだろうと片付けた。

晩夏でもまだ長い陽は、もう大分前に落ちている。

そろそろ俺も寝ないとなんだけど。

どーしよっかなと一瞬考えて、、、

恋次の隣に潜り込んだ。


毎日知ってる手触りの髪を薄く撫でたら、うっかりキスしたくなったけど、そこまでの勇気はまだちょっと足りなくて、恋次の寝息を聞きながら、俺はゆっくり目を閉じた。


END



タイトルの『魂を入れ替える』は慣用句で、本来の意味は「心を改める。性根を入れかえる」です。ここでは字面のまま使用;;しかも安直…広辞苑見ててそのままサラリとなんのヒネリもなくNe★良いんです、前のふたつもなんのヒネリもなかったから!
さてこのSSでは、義骸は『入った魂の形が反映される解釈』ではなく『義魂丸のように入れモノの形が反映される解釈』で進めています。
原作でルキアがソッコー義骸で出て来たの見ると義骸の解釈は前者っぽいと思っていますが、後者の方が色々面白いと思って…★ルキアが簡単に同じ外見を手に入れたのも、浦原さんの技術だったら一晩で霊子体とまったく同じ入れモノ作れるんじゃない?って解釈も出来ますし♪
さてなんだろう、今回はちょっと甘く出来たのでしょうか;;出来てたらいいなvV前回おろそかになってしまった一護視点が出来たのも良かったです♪でも一人称じゃないと出来ないんだァ…;;頑張ろっ;;
ah、ラストで一護に足りなかった勇気は、自分の身体にキスる勇気です★念のため★