電車に乗って、ちょっと遠くへ。
そんなぐらいの感覚で、一護は尸魂界に行く。
ちょっと離れた友達の家に遊びに行くのと同じ感覚。
ト・レ.イ ン (携帯用)
「あ、いっちー!!」
尸魂界に到着した一護を一番に見つけるのは、何故かいつもやちる。霊圧なんか一護より探知できないのに、いつも真っ先に飛んでくる。
「よー。やちる」
慣れっこの一護は軽い挨拶をして、少女の頭を撫でてやったりする。どうにも妹が一人増えた感覚で、まとわりつくやちるが可愛らしいと思う。
やちるは、一護の来訪理由など問わないし気にしない。というか頭にない。
そうして一護はいつも、十一番隊隊舎へと引っ張られるのだ。
剣八の霊圧がちょっと(かなり;;)怖いけど、
そこに居れば会えるから。
「いっちごー!暇なら道場行こーぜ!!」
「何言ってんの。君が暇じゃないでしょ」
「つるりんはお仕事!いっちーはあたしと遊ぶの!」
「よし、それじゃあ真剣勝負の鬼事といこうじゃねーか、なァ一護!」
「ギャーーー!!ふざけんなーーーー!!!」
そんな事を繰り返して数十分。一護が
アレ?ここの隊 隊長と副隊長の仕事は??
と ふと気付く頃、来界目的の死神が現れるのもいつものこと。
『何時、何処に、誰が、何の目的で、来た』なんて伝令しなくても、十一番隊最上幹部達のはしゃぎ様を見れば霊圧が察知出来ない者にだって容易く知れ渡る、一護の来界。
不規則にみえるそれのダイヤを知っている者は、一人。
勝手知ったる様子で十一番隊舎へ上がり込み、一際騒がしい方へと目指せば、案内など必要ない。
「一護!」
呼ぶ声に、
「恋次!」
目的の死神の到着を見て、一護は顔をほころばせた。
「よ、今日は早かったな」
「おう!たまたま昨日の内にデカイ仕事が片付いてよ」
実は無理矢理ほぼ貫徹で仕上げたなんて事は言わないのは、恋次のプライドで。実際のとこ薄々バレてそうだな・って考えは蛇尾丸で切り捨てとく。
一護は、気軽に瀞霊廷に顔を出す。
だから恋次は、ふと忘れてしまう時がある。
―――自分が、死人だという事を。
幼い頃一護がそうだったように、死者と生者の区別がつかなくなる。一護があまりにも自然にそこにいて、喋って、笑って、怒って、殴り合って、触れるから。
「お前、あったかいよな」
と言われて、びっくりした事がある。
「えぇ?何言ってんだよ当たり前だろうが!」
と笑ったら、
「…そっか。そうだな」
と言葉を濁された。
その時は変なヤツと思っただけだったけど、
「じゃー俺そろそろ帰るわ。明日、日曜だろ?久しぶりに啓吾と水色とチャドとでどっか行こうっつっててさ」
啓吾に最近付き合い悪いって言われてよー、そういえばこの頃休みはずっとこっちだったなーって思った!
そう一護が笑って言ったとき、
“ ああ・コイツは“生きてる世界”の人間なんだった ”・と
再確認してしまったのだ。
そういうふとした時に気付かされる、一護と自分との違い。
どうすることも出来ないその事実に、恋次は女々しいと思いながらも霞のような不安を抱える事がある。
今も並んで歩きながらそんな事を考えていたら
「オイ恋次。何ボーっとしてんだよ。らしくねぇな」
「う・うるっせ、俺だって考え事ぐらいすんだよ!」
「へぇー?俺と一緒にいる時にする考え事なら、当然俺のコトだよなぁ?」
底意地の悪い視線をぶつけられる。
「な、わけ…ねーだ・ろっ!!」
何でバレてんだとかどーせ口先だけだと思ってても、図星を指されれば否定してしまうくだらないプライド。
しかもそれが、馬鹿みたいにネガティブな内容だから尚更だ。
その馬鹿みたいな恋次の態度に一護は、はーーーっっと溜息をついて
「あのなぁ、俺がこっちに来る意味分かってんのか?俺が来てんのはやちると遊ぶためでも、一角と試合するためでも、剣八に殺されるためでもねーんだぞ」
「わ・分かってるっつの…」
煮え切らない恋次の態度に 彼の部屋がもうすぐそこなのが目に留まって、一護は恋次の腕を掴んで走り出した。
「っうわ!」
障子戸に体を滑り込ませると、恋次の耳元に口を寄せる。
「だから、俺が行く日、お前にしか教えてねーんだろ」
首筋にかかる息のくすぐったさに、恋次は肩をすくめる。
「分かってる…っつんだ、ょ…」
分かっているんだ、『そんなこと』ぐらい。
でも・まだ、
一護は、ここに居る一護は、 仮・の・
「全然、遠い気がしねぇよ、ココは」
「あ?」
「今まで知らなかったのが嘘みてーなくらい………俺の生活に溶け込んじまってる」
「いち…………」
いつでも来るんだから、小難しい事考えてんな・と言外に含ませて。 。 。だから、
恋次は目の前のぬくもりに、手を・伸ばした。
二人の道は、ずっと真っ直ぐに。
時々一定の間隔で繋がりながら、何処までも伸びて行く。
それはまるで線路のように。
そうして、いつか一護が乗って行ったきりになるその日まで ・ ・ ・
冥界行きの往復列車は発車し続けるのだ。
END
…あれ?一護サイドの話にしようと思って書き始めたのに3分の2ぐらい恋次視点になっちゃいましたよ??・・・・・・不覚!!しかももっとさらっとさっぱりした話のつもりがなんかラストホラー?みたいな…;;もっと甘いの書けないものか!!Σ(=□=;)>スイーツに頼らずにね・・・<(=u=;;)イヤ、ただ単にネタが無いだけですスンマソン・・・orz